てとん、てとん。
XQ2
電車小僧が一歳過ぎたころ、ぽつりと言葉が出始めたころ。
「カンカンカン(踏切)」というのが、私たちが最初にはっきりと聞き取ることのできた”言葉”だった。
彼は、電車への思いを口にしたくて、言葉を発したのだ。
「ママ」よりもずっと先に
…ああ、どんだけ電車好きだよ。
あの頃、旦那がすごく早く帰ってくる日というのが時々あって
そんな日は、あんよの練習をしに車で河川敷の公園に行った。
公園からは鉄橋を渡る電車がよく見える。
そして、そのうち電車小僧が電車のことを「てっとん」というようになった。
どこからきたのかな?と、探してみたら答えはその鉄橋にあった。
電車が鉄橋を渡る音をよーく聞くと、確かに”てとん、てとん”といっている。
がたんごとん、とは聞こえないのだ。
子どもって、本当に耳がいい。
「てっとん、てっとん!!てとんてとんー、てとんてとんー!」
保育園に行って、お友達に「ちがうよー」と言われるまで
彼はずっとそう言って電車のおもちゃを走らせて遊んでいた。
今でもたまーに言っている。
ママは知っている。
夫にはなぜ正しい言葉を教えないのか、と怒られたが
私は「てとん」でもいいじゃないかと思っていた。
そんなことを思っていたら、何もしなくても治ってしまった。
「がたん、ごとん!」
電車小僧は今日も、そういいながら興奮した様子で電車に乗る。
その成長が
うれしくもあり、さみしくもあり。